私は水木しげるさんの本というのはあまり読んだことがなかったのだが、↑このような本を出されていた。
水木しげるさんといえば、なんといっても「ゲゲゲの鬼太郎」であったり「悪魔くん」であったりすると思うが、そういうのは私の趣味に合わず、そのため読んでいなかったのだが、
水木しげるさんという方は、大まかにいうと、
不思議なことならば全部好き
という方であったらしい。この「神秘家列伝」というのは、水木しげるさん及びその門弟たちで作る雑誌『怪』というのがあって、それに連載されていたものをまとめたものである。
(執筆陣には、水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、多田克己、村上健司らがいる)
要は「水木しげる」さんが「影響を受けた人」を描いているため、「神秘家」でない方も何人か採り上げられている。例えば、「宮武外骨」という人が出てくるが、この人は明治~大正~昭和期に活動した新聞稼業の方だし、「駿府の安鶴」さんという方は江戸時代の大工さんである。もっとも、安鶴さんの場合は「狐が人に化けた話」が出てくるので、「神秘家」といえなくもない。
水木さんがご存命のころから単行本化されていたが、完結を待たずして亡くなられたため、「神秘家列伝」は4巻で終了、未完である。だが一話完結型なので、どこから読んでもよい。
この「神秘家列伝」というのは、ある意味では画期的な本だ。
例えば、1巻の第一話で採り上げられた「スウェーデンボルグ」であるが・・・、
「神秘家列伝」で興味を持ち、「スウェーデンボルグ」に関する入門書かなにかないだろうか、と調べてみたが、なかなかないのである。
現在では何冊か売っているので、そのうちのもっとも平易なものを買うことができたのだが、それ以外はお手上げになってしまう。
「明恵上人」が19歳から60歳まで書き続けた夢の日記である「夢記」というものがあり、「神秘家列伝」ではそのエピソードをいろいろ紹介しているが、「夢記」の現代語訳は売っていないのである。
(と思って調べたらようやく見つかった・・が、なんと8,800円だと!? また、岩波文庫からも出ているのだが、えてしてこういうものは訳が難解で読みにくいものが多いイメージがある)
結局何を言いたいかといえば、「原典にあたるのが困難、翻訳書を探すのも困難」という方々についてわかりやすく解説してある、という意味で画期的だということである。
また、ジャンルがジャンルだけに、ごく一般には知られていない方々ばかりが採り上げられている。
ブードゥー教の開祖である「マカンダル」のエピソードなど、普通に生きていれば一生知ることがないものばかりである(そもそも開祖の名前を知らなかった)。
ということで、角川文庫1~4巻に収められている方々の名前を列挙してみる。
- スウェーデンボルグ(エマヌエル・スウェーデンボリともいう。史上初めてスピリチュアリズムを唱えた人物)
- ミラレパ(チベットの仏教修行者、聖人)
- マカンダル(ブードゥー教の開祖)
- 明恵(江戸時代の日本の僧侶。19歳から書き続けた夢の日記「夢記」が有名。夢に出てきた賢人や神からいろいろと学んだ)
- 安倍晴明(陰陽師)
- 長南年恵(霊能力者)
- コナン・ドイル(「シャーロック・ホームズ」で有名な作家だが、晩年はスピリチュアリズムに傾倒し、各地で講演を行った)
- 宮武外骨(明治~昭和期にかけて活動した新聞業の人)
- 出口王仁三郎(史上最大の霊能力者とも言われる人)
- 役小角(修験道の開祖)
- 井上円了(東洋大学の創始者)
- 平田篤胤(江戸時代の国学者)
- 仙台四郎(仙台で「福の神」として祀られている江戸時代の人)
- 天狗小僧寅吉(江戸時代に実在した少年であることはわかっているが、途中で消息不明になる。天狗について修行をしたといわれている)
- 駿府の安鶴(江戸時代の大工さん)
- 柳田国男(民俗学者)
- 泉鏡花(明治~昭和期の小説家)
となっている。
特に「ミラレパ」という人については、この本以外で目にしたことは一度もない。
「仙台四郎」については、「仙台四郎の絵」を商売繁盛のために掲げている店が、自分の家の近所にあったのである。実物を見て、「あ、あれがそうか!!」と驚いたものである。ということは、店主は仙台の出身なのかもしれない・・。
また、「コナン・ドイル」については、特に日本の方は「シャーロック・ホームズの作者」としての面しか知らないのが普通であるから、彼の人生を俯瞰的に述べた本というのはなかなかないと思う。というのは、そちらをうかつに語ってしまうと「シャーロック・ホームズ」人気に影をさしてしまうということが考えられるからだ。しかし、どういった経緯で「シャーロック・ホームズ」が生まれたのか、というのを知るという意味でもやはり興味深い。
この中から一人選んで書こうかと思ったのだが、「神秘家列伝」自体の説明が長くなったので、それはまたの機会にすることとする。
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