友人に勧められて読んだ。
話のあらすじとしては、「アゾリアス」という王国において、執政を担当している、グリード・ラクトス公爵とその一家の面々・・・は、皆顔が怖かった。
その顔の怖さから「何かたくらんでそう」「裏で暗躍してそう」という噂が立つのであるが、実は彼らは「顔が怖いただの人たち」であった・・というギャグ作品である。
そして、この作品が面白いのは、その「形式」にある。
1章が短く、「語り部」が毎回変わっていき、一人称視点で進む。「地の文」はないこともないが、大半が「語り部視点」である。
具体的にいうと、
- Aという人がBという人について語る。
- Bが今度はCについて語る。
- Cが今度はDについて語る。
- DがBについて語る。
- BがEについて語る。
・・・・・・・、といったような様式になっており、「語り部」が変化することで「時間の経過」も表現しているのである。だから、「話のステージ」となる場が置いてきぼりになることもなく、読者は「話の流れ」を追ってはいるのだが、その「語り倍」が次々に変わっていく、ということなのだ。
そしてその「1章が短い」ということにより、テンポよく読める。
このような、「語り部の変化」という点でいうと、「物語シリーズ」や「まおゆう」などを思い出す。
「まおゆう」にいたっては、「個人名」がなく、役職(?)の「女騎士」「勇者」「貴族」といった感じであった。
そしてこの「顔が怖い話」というのは、少々既視感があった。昔の作品なのであまり知られていないとは思うが、こういうのがあった。
「エンジェル伝説」という作品である。主人公「北野誠一郎」君はとても心の優しい青年。しかし彼の目は常に三白眼で髪はくせっ毛のため常にポマードで塗りつけられており、本人の意図とは正反対に「極悪顔」であった・・・。そして、そんな彼には「番長」や「ヤンキー」といった存在が近づくのである。北野君は別にケンカが強いわけではないので、どこかで誤解が解ければいいのだが、そんなときに限ってなぜか彼らに勝ってしまい、「北野軍団」が次第に大きくなっていく・・・という、ギャグ漫画(今は電子版もあるよ)。
著者の八木教広氏はその後「CLAYMORE」を連載することになるわけである。
話をこちらの作品に戻すと、↑このような「様式」が面白い。また「顔が怖い」だけから派生する出来事が面白い。梅雨の終わり際なので(もう明けたが)「笑える話を読みたい・・・」と思っていたところだったのでちょうどよかった。
また、イラストがところどころにあるのだが、どうみても「悪巧みをしているシーン」にしか見えない。実は雑談をしているシーンだったりするのだが・・。
著者の「逆又練物」さんは、普段は成人向け漫画を書いている漫画家だそうで、小説はこれがデビュー作になる模様。
現在2巻まで出ているため、2巻も読み終えたが、この2巻で完結かもしれない。
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