世界一シリーズ7 ハリバット

生物学
本種はカレイ目で最大の種類で、体長2mを超える場合もある。(右は身長150cmと小柄だったフィオレロ・ラガーディアニューヨーク市長、1939年撮影)
コメント、写真はWikipediaから引用。写真はパブリック・ドメイン。

「オヒョウ(大鮃)」は、英語では「ハリバット」といい、カレイの中では世界一大きい魚である。

日本名では「おひょう」という。ややこしいことに、「おひょう」を漢字で書くと「大鮃」となり、そのまま読んでしまうと、(カレイなのに)「おおひらめ」となる。

体長は1メートルを超え、大きなものになると3~4メートル、体重200kgに達することもある。しかし、巨大になるのは全てメスで、オスはその1/3程度の大きさにしかならない。

おひょうは、食用としても用いられており、回転寿司では「ヒラメのエンガワ」の代用として使われることもある。

なお、ここには権利の関係で掲載できないが、「おひょう」あるいは「ハリバット」で検索すると、より巨大な写真がネット上にあるので、そちらでも見てみてほしい。

で、常々疑問に思っていたことがある。

日本では通常ヒラメのほうがカレイより商品価値が上だ。

「左ヒラメに右ガレイ」ともいうくらいで「ちゃんと見分けないとダメ」という意識がある。

ヒラメは寿司ダネになるが、カレイは通常煮付けや唐揚げとして食べられる。なお、「星ガレイ」というカレイはヒラメ・カレイ類の中でも高価で、これは寿司ダネにもなる。

で、じゃあ「海外ではどうなのか?」というのが疑問なのである。

例えば中国では、「大地魚」というのがある。これは干物にしてダシをとるのに使うのだそうだが、資料によっては「カレイ」、資料によっては「ヒラメ」と一定していない。要は「ヒラメかカレイ」ということらしいのだ。「美味しんぼ」においては「ヒラメ」としてあったが、別の資料では「カレイ」になっているのである。

ということはつまり、中華料理においてはヒラメもカレイも「大地魚」であり、区別がついていないのかもしれない。中華料理では基本的に熱を通した料理が基本であるため、「生で食べたときの味の違い」はスルーされているのかもしれない。

で、今度はフランス料理の話になる。

かつてフランスにおいて、「シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール」(1754年-1838年)という外交官がいた。ややこしいので以降「タレーラン」と書く。タレーランは「アントナン・カレ-ム」という料理人を雇い、外交に「料理」を活用したことで知られる。

で、タレーランの逸話として「おおひらめ料理の話」というのがある。Wikipediaからその部分を引用してみる。


あるとき、タレーランは2匹の大きなヒラメを入手した。これは、当時としては大富豪でもなければ不可能なことだった。さっそく客たちにふるまうことにしたが、しかし2匹同時に食卓に出せば自慢と受け取られ、反発されることも予想される。そこでタレーランはあらかじめ使用人に指示して、1匹目のヒラメ料理を客たちの目前でわざと皿から落とさせて台無しにしてしまった。楽しみにしていたヒラメ料理を食べ損ねて客たちが落胆した所に、タレーランはすかさず2匹目のヒラメ料理を持って来させたため、客たちは大いに歓喜したと言われる。


↑と、こういうエピソードなのだが、はっきりしたことはわからないが、この「大ヒラメ」というのは「オヒョウ」のことではないかと思われるのだ。

(いろいろ調べたが、このエピソードの「大ヒラメ」の種類が何なのかについては結局わからなかった)

「おおひらめ」を入手することは、「これは、当時としては大富豪でもなければ不可能なことだった」と書いてあるため、そう判断する。文字通りの「大型のヒラメ」の場合「大富豪でなければ不可能」とはならないと思うのだ。

ということで、個人的な見解ではあるが、このエピソードの「おおひらめ」は「おひょう」であり、「大きなヒラメ」ではなく「大きなカレイ」と書かなければおかしい、と思うのである。

フランス料理においても「ヒラメとカレイの区別」はしていないのではないだろうか? と思ったエピソードである。

ところが、さらに調べてみてわかったが、「左ヒラメに右ガレイ」は日本オンリーの見分け方だそうである。

知って得する!川田一輝のお魚あれこれ No.20 ヒラメとカレイの見分け方

↑この記事によると、「海外には普通に右ヒラメもいる」ということで、これでは見分けがつかない。

実は「口の形」で見分けるのが正式な見分け方であるようだ。

また、↑この記事に「ザブトン」という体長1メートルになるヒラメについて書かれているが、実はこれがタレーランの時代の「おおひらめ」なのかもしれない。

ミスター世界の食文化紀行

↑によれば、中国でも日本と同じように「ヒラメとカレイ」は区別しているが、海外では左右の違いは無視している、となっている。

ただ、これは「無視」ではなく、「区別がつかない」というのが正しいのかもしれない。「左ヒラメに右ガレイ」が日本独自の見分け方だというのは全く知らなかったし、海外では「右ヒラメもいる」となったら、専門家でも区別はつかないのかもしれない。

ハリバットの紹介から大分脱線した上に、最後はグダグダになってしまったが、分類学的にいえば、

ヒラメとカレイはどういう分類に属するのかといえば、「カレイ目」である。実は「カレイ」の分類のほうが幅が広い。

ヒラメは「カレイの一種」という位置づけになる。

寿司ダネの市場価値からいえば逆になるイメージがあるが、カレイ目は広いのだった。そして、その中に「オヒョウ」もいる、ということである。


参考資料:Wikipedia「カレイ」「オヒョウ」「ヒラメ」「シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール

知って得する!川田一輝のお魚あれこれ No.20 ヒラメとカレイの見分け方ミスター世界の食文化紀行

「美味しんぼ」(作・雁屋哲 画・花咲アキラ 小学館)


・・と、ハリバットの記事を書いたら、なんと2021年5月19日の記事で、

「体長2メートルのオヒョウが捕獲された」という記事が出た。

根室沖で体長2mの超特大オヒョウ水揚げ 漁労長もびっくり

ネット検索で見つかるハリバットの写真は大抵海外のものなので、日本で見つかるのは珍しいと思う。

記事中においても、

「戦前はしばしば水揚げされたが、近年は珍しいという」と書かれている。

身長180センチの漁労長、福士栄太さんの背を超える超特大オヒョウ=北海道根室市で2021年5月17日、福士さん提供
毎日新聞の記事より引用。

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