というのを読んだ。
タイトル通りの話で「ヒモの話か」と思ったのだが、そういう単純な話でもなかった。
仕事が大変できるOLさん、早乙女ミオは、仕事以外に生き甲斐がない。ある日家に入ろうとしたら鍵がない。そして部屋の中には明日の会議に使う書類があり、その書類がなければ、最悪会社が潰れるかも・・・。
という状態に遭遇したマンションの隣人の松友(主人公)。以前の仕事の経験を活かし、「とってきましょう」といい、ベランダから隣に移動し、窓ガラスにテープを貼って割る。中に入り鍵をあける。そして早乙女さんを迎えるため「おかえりなさい」という・・。ここで早乙女さんにスイッチが入ってしまう。
「おかえりなさい」という言葉に彼女は大変な思い入れがあった(後半の伏線)。そしてその場で「あなたを月収30万円で雇います。毎日私に「おかえりなさい」を言ってください」という謎の言葉を言われる。
松友が「???」となっている間に早乙女さんは裏から手を回し、なんと松友の会社から松友をヘッドハンティング。再就職先はマンションの隣の部屋・・・。
松友も「「おかえりなさい」をいうだけというのは気が引ける」ということで、「主夫」のような仕事をするようになる・・という話。
始まりはコメディータッチだったし、そういう話だと思って読んでいたら、早乙女さんの日常が次第に明らかになってゆく。
「仕事ができる人」の典型的な例として早乙女さんは「自己肯定感」が極端に低い。
だからこそ、友人も恋人もいなかったのだ。
そしてその「極端に低い自己肯定感」がどのようにしてできていったのか、というのを松友は知ることになる。
しかしそのくらいになるとすでに松友を始めとして松友の前の会社の同僚、前の会社の後輩、と次第に早乙女さんの友人、という存在が増えてきて、4人でみんなでわいわい、という風景が次第に増えていって・・。
今では、早乙女さんの周りには、松友をはじめとして、彼女を損得勘定で見ない友人がいる・・・という話。
いろいろ考えるところがあったし、彼女の高い仕事スキルが「幼少期のトラウマ」からきていたというのは大いに頷けるものがある。
何の用語なのかはっきりしないが「補完の法則」というものがある。視覚障害がある人が逆に触覚や聴覚にすぐれる、というような、「あるところでマイナス部分があると、別のところでプラス部分が増える」のような。
この「補完の法則」はいろんな分野でそれなりに作用しているように感じる。トラウマがある人が論理的思考能力や仕事のスキルが高かったりするのもそういうことではないのだろうか。
そういった負の部分を知ると、冒頭の「私の月収は50万円です。30万円あげますから毎日私に「おかえりなさい」を言ってください」というのも、突拍子もない話、とはいえない気がしてくる。
人は「他人にどう思われようと、これには価値を置きたい」というものがあったりする。人によってはゲームだったり模型だったり、あるいは将棋だったりと様々だ。今回はその価値が「「おかえりなさい」を言われること」である・・。
月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい
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