ついに完結巻である。
この話はなにしろ、とても「文学」だった・・・というのは以前も書いたけれども、あらすじも自分がまとめるよりAmazonのものがよかったので、こちらに引用してみる。
とうとう見つけたよ/何を?
「いいですねェ恋。恋はいい。恋ほど女を美しく見せるものはない」
実家への挨拶を兼ねた伊豆旅行。ところが仙波監督の思惑で、ひなたたち中学生組も参加、その場でドキュメンタリー撮影が始まってしまう。
一方、ひなたと明日香の“女の戦い”は加速するばかり。間にはさまれた達也は、ひとり頭を抱えるのだが……?
フィルムに映る少女の恋は、果たして虚構か真実か。
何がとびだすかわからないビックリ箱――椿屋ひなたが、ついに世界に解き放たれる。
エモ×尊みラブコメ、“羽化”を迎える第4弾!
1行目の「 とうとう見つけたよ/何を? 」は詩人の言葉である。
これは「あとがき」にて発覚するものなので、ネタバレ回避したい方はここを読まないでほしい。
とうとう見つけたよ/何を?/永遠を 太陽と共に沈み去った/あの海をだよ ――
アルチュール・ランボー『永遠』より
作中に、ヒロイン・椿屋ひなたが「ランボーを好きだ」というシーンがあるのだ。
さて、3巻で豊田彩夏とともに映画のエキストラに出演した椿屋ひなたであったが、そこで仙波という映画監督に目をつけられる。
「これは逸材だ」と。
豊田もまあまあではあるが、椿屋はなにか違うと、特別な「存在」なのだと。
Amazonの他のレビューにもあったが、「すごいすごいばかりで、どうすごいのかがよくわからない」と。しかしそれはいいのではないか。音と映像がないラノベという世界なのだから「すごい」といえばそれは「すごい」と納得しておけばよいと私は思う。まあ実際私もその場で椿屋が何をどうしたのかはわからなかったが・・・(描写もなかった)。しかしそれはそういう文章のテクニックだと思っている。
今巻においては、主人公・小野寺達也と、大学時代の同窓生であり同僚の藤本明日香との結婚・・・を前提とした藤本家(旅館)への旅行・・・になぜか椿屋たち4人グループと、映画関係の仙波グループがついてきた、という話が大半を占める。
旅館において何がおきたか、おきるか、というのがこの巻の見せ所である。
また、3巻において「女優?」という話が出たことで、話が別ベクトルに向かっているような気もしたのだが、今巻において椿屋の母の素性が明かされ、そこで納得するものがあった。
「存在そのものが他の人より飛び抜けている人」が「成る」ものとはなにか・・・。それが「女優」であっても別におかしくはない。
この「温泉旅行」のクライマックスにおいては、椿屋は退いたかに見えた。
しかし、その後日談がエピローグとしてあるのである。
結局どうなったか。
作中の言葉を借りれば「映画『卒業』のようにはしたくなかった」ということになるだろうか。
結局、達也と明日香は結婚するのか、したのか、椿屋は女優への道を歩むのか、それはそれとして、達也への恋心をどうしたのか・・・が、ラスト付近ではスラップスティックな感じにまとめられている。
とはいえ、こういう爽快感のある終わり方はしばらく見ていなかったので、好きだ!
作者の鈴木大輔様が、「自分にはこのくらいの長さが合っているのかもしれない」とおっしゃっていたが・・・・、うーん、ここで終わってよかったのかも、という思いと、もっと「文学」をやってほしかった気がするような、という思いも、両方ある。だがしかし、これ以上「文学」が続くようなら多分自分は読むのをやめていただろうな、とも思った。
もう他の読者層の話になってしまう。
このような「存在の異質さ」を描いた話は最近読んでいなかったので、なかなかに楽しめた。そしてまた、今後の椿屋が何をするのか、全く想像がつかない。さらにいえば、エピローグのあとどうやって現実に回帰するのかも予測がつかない。
しかし、物語の書き手は「現実に回帰してから」の話なぞ想定しないほうがよいのかもしれない。そう思わせる終わり方だった。
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