ヒドラという生物がいる。淡水に棲み、体長は1センチほどで、あちこちにいるらしい。私は見たことがないが、特に珍しい生物ではないらしい。
この生物の何が世界一かというと「寿命が世界一」である。
本当は別のものを書こうとしており、そちらの資料を集めていたところ、結論が覆ってしまった。
ここで、それまで書く予定であった「ベニクラゲ」について説明してみる。
↑パブリック・ドメインの写真がなかったので、本の表紙を載せてみる。
「ベニクラゲ」は一時期話題になったので覚えている方も多いかもしれない。
ベニクラゲは「ポリプ期(幼生期)」を経て成体になるが、「成熟した個体がポリプ期に退行可能」という性質を持っている。
どういうことかといえば、「年をとったら若返ることができる」ということで、そのため「不老不死のクラゲ」ともいわれるのだが、これは半分間違っている。
というのは、実際には「不老」ではないからで、正確には「年をとったら若返ることが可能」ということだからだ。しかも「可能」というからには「不可能」であるケースもある。
Wikipediaにはこうある。
この現象は地中海産のチチュウカイベニクラゲ(T. dohrnii)で発見され、1991年に学会発表されてセンセーションを起こした。その後各地で追試されたが、地中海産のものでしかこの現象は見られなかった。しかし、鹿児島湾で採集された個体も同様の能力を持つことが2001年にかごしま水族館で確認された。
これは要するに、「若返り」には何らかの条件が必要で、その条件が満たされない限り「若返り」はおこらず、そのため「不老」とはいえない、ということを意味すると思われる。「不老不死」ばかりが強調されるが、実際にはそんなことはないのではないだろうか。
ただ、そうはいっても「若返る能力がある」のは事実であり、そのため、「寿命はない」とも言える。あえて書くならば「5億年くらい」だそうであるが、これは進化史的に考えるとそのくらいが妥当だろう、という推量である。
文脈から察するに「一つの種が滅ぶのが大体5億年くらいだから、それを寿命ということにしておけばよいのではないか」という意味かと思われる。
・・と、私は思っていたのだが、実際にベニクラゲよりも長命とされるのが「ヒドラ」である。
ヒドラは世界中の淡水の池沼や田んぼに棲んでおり、水草や石などに付着しており、体長は1センチほどである。
だから、私もどこかで見ているのではないかと思うのだが、記憶がない。
試しに自分の生まれ育った故郷にいるかどうかを調べたところ、普通に研究結果が見つかった。
ヒドラは全身の半分が幹細胞で構成されている。幹細胞とはなにかといえば、こういうものである。
幹細胞とは、自己複製能と分化能を持つ特殊化していない細胞と定義されています(図1.1)。 自己複製とは、幹細胞が複数の細胞分裂の周期を経ても、未分化状態を維持する(すなわち、母細胞と同一の娘細胞を生成する)能力と定義されています。
Thermo Fisher Scientific 幹細胞の基礎を学ぼう より
ということで、ヒドラはほぼ自己と完全に同一のクローンを複製できる。
ヒドラをすりつぶすと、すりつぶした数だけ同じ数のヒドラが新たに成長する。
強い再生能力を持ち、約20日間で細胞が完全に入れ替わる。
基本的に永遠に完璧な幹細胞をコピーできるため、生物学的な「老化現象」が全く起きない、つまり「不死」を体得しているのである。
幹細胞を完璧にコピーできるということを生物学的な「不老化」といい、「老化しない」のである。
人間の場合はこの幹細胞がわずかしかないので「老化現象」が見られるが、ヒドラにはそれがない。
そのため、ベニクラゲの「5億年」すら通用しない「不死」でありさらに「不老」つまり文字通りの「不老不死」なのである。
下記の記事に詳細が書かれているため、参考にされたし。
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