昆虫の起源についての考察 その2

生物学

まさか「その2」を書くとは思わなかった・・が、

以前の記事を書いたあとにふと疑問に思ったのだ。

というのは、脊椎動物のケースでいえば、「羽」は前脚の変形したものである。あれは手のひらが巨大化して、腕の骨が縮まった骨格をしている。

そのため、「羽を持つ」ということは、「その分足が減る」という意味になり、羽を有する動物は足が2本になる。

しかし昆虫はどうか?

通常知られているように、昆虫の足は3つの体節からそれぞれ1対ずつ2本あるため、計6本であり、

さらに翅は、第2節と第3節にそれぞれ1対ずつあるものは計4枚、そして「双翅目」というグループでは2枚の翅を持つ。

この「双翅目」の場合、後翅にあたる2枚の翅が「平均棍」という器官に変化している。この「平均棍」は飛翔機能は退化しているものの、「飛翔中の安定性のため空中での回転運動を感知するジャイロスコープのような器官」であるらしい(「昭和リーブス福知山店研究室ブログ」より引用)。

この他に「無翅昆虫」というものもおり、これらはもともと翅がなく、幼虫と成虫が大して変化しない、原始的な虫であるとされる。

さてここで、再び脊椎動物の話に戻ると、「羽を有する」=「その分足の数が減る」ということになるので、

西洋のファンタジーに出てくるような

ドラゴン

アメリカイラストレータージェームズ・アレン・セント=ジョン英語版)が、1905年刊行の自著のために描いた扉絵
画像はパブリック・ドメイン

のように、

羽があり、さらに腕2本、足2本がある

というのは、地球上の生物としては

ありえない

のである。

しかしながら、昆虫の翅というのは、前回の記事でも触れたように、

海中甲殻類の足が背中側に移動し翅に変形した

というのがその起源であるため、いくら翅があろうが、足の数を減らすことにはならない。

Wikipediaにはこのように書かれている。


昆虫の翅は、脊椎動物に見られるような、前脚の変形ではない。従って、翅を持つことが歩脚の性能を制限することはない。飛行可能な脊椎動物(翼竜コウモリ)が、その代わりに歩行能力を大幅に制限されるのとは異なり、昆虫の多くは十分な歩行能力をもっている。このような翅のあり方をもつのは昆虫以外では、空想の産物である天使烏天狗などしかない。地球の歴史上、飛行能力を最初に獲得したのも昆虫である。

(Wikipedia「昆虫の翅」より引用)


と、ここで最後に魅惑的なワードが出てきた!

天使

烏天狗

である。確かに、言われてみれば烏天狗は人間の形をした上で羽があるから、天使と同型だった!

と、最後にロマンを感じさせる単語が出てきたところで今回はおしまいとする。

もともと、「節足動物の原則から考えたら、昆虫の足は本来10本だったのだろうか?」という疑問から出発したのだが、いろいろな謎が解明されて興味深かった。

なお、「昆虫の足は本来10本だったのだろうか?」というもともとの疑問の答えはここにあった。

Quara 昆虫の足は6本ですが、羽が4枚あります。鳥やコウモリのように四肢が翼に変化したのだとすれば、原始的な昆虫は元々10本足だったということになるのでしょうか?

↑これを見ると、「6本よりも多く生えていた足が翅に変化した、ということではなく、陸上生活に適応した形態になったときにすでに翅になっていた」ということのようだ。つまり「昆虫」に限定せず、「昆虫以前の甲殻類」に遡れば「10本足の甲殻類から6本足の昆虫に進化した」とは言えるのかもしれない。それ以前には「昆虫の祖先は多足類」という認識であったため、このあたりでも学説の変遷がうかがえる。


参考資料:Wikipedia「昆虫の翅」「無翅亜綱」、「昭和リーブス福知山店研究室ブログ」、「Quara

コメント

タイトルとURLをコピーしました