鰹節

食べ物

「美味しんぼ」の和歌山県編に、鰹節の起原が書かれており、そこからいろいろ調べてみた。

作中では、「和歌山出身の印南の甚太郎という人が、高知で鰹節の作り方を教えた」となっている。

この「印南いんなみの甚太郎」の「印南」とは土地名なのか、苗字なのか?

まずはそういった疑問から。

また、現在の鰹節の原型以前の話になると込み入った話になるため、それは割愛する。

結論としては、「印南」は地名で、「紀州印南浦(現印南町)」というところに住んでいた「角谷甚太郎」という人物が、紀州と土佐を行ったり来たりして漁をしていた。

魚が傷みやすい初夏から秋にかけてはかつおが大量に釣れるため、当初はそれを煮て乾かしていたのだが、燻製にして保存するという「燻乾法」(別名:焙乾法)を考案し、現在の荒節に近いものが作られた。

これは「熊野節」と呼ばれ、人気を博し、土佐藩は藩をあげて熊野節の製法を導入する。

甚太郎は「脂が多いものは生食用、脂が少ないものは節にせよ」と指導していたようだ。

やがて二代目甚太郎の世になると、カビの発生に悩まされたのだが、二代目甚太郎はカビを防ぐのではなく、そのまま利用することを思い立つ。

青カビをつけて日光乾燥を繰り返す「燻乾カビ付け法」という方法であった。この「燻乾カビ付け法」によって、ほぼ現在の鰹節の製法が完成した。

この「改良土佐節」は長期の輸送および保存にも耐えることができたため人気を博した。

なお、「改良土佐節」は、甚太郎が故郷の紀州に伝えた以外は「土佐藩の秘伝」とされたのだが、同じく印南漁民である森弥平兵衛と印南與市(通称・土佐與市)により、枕崎、南房総、西伊豆に伝授され、土佐節・薩摩節・伊豆節が三大名産品と言われるようになった。

今回調べてみて、「なんのカビをつけるのか」という種類もわかった。青カビによる発酵といえば、まるでブルーチーズのようだ。

なお、現在の鰹節では1番カビとしてペニシリウム属のカビ(青カビ)をつけ、2番カビ以降はアスペルギルス属のカビが生えてきて、3番カビまでは人為的に行われるが、4番、5番カビは自然に行われ、ついにはカビが生じなくなる。

鰹節というのは実に巧妙な食品である。

燻製によって水分を飛ばし、カビが身肉と脂肪分を分解し、イノシン酸と30種類ものアミノ酸に変える。身肉と脂肪分が分解されてしまうとカビも死滅して、後には旨味豊富な鰹節だけが残る・・・。実に理にかなった製法である。

なんと、鰹節のアミノ酸スコアは100点であり、必須アミノ酸9種類を全て含んでいる。

まさにバイオ・サイエンス。経験的に行ってきたことにしっかりと裏付けがあるというよい例だろう。


参考資料:「美味しんぼ」雁屋哲、花咲アキラ:著

Wikipedia「鰹節」、鰹節発祥の地・印南。漁民3人衆の功績を訪ねる丸与ホームページ中平商店ホームページ

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