科学っぽかったりサブカルだったり より引用
「バージェス動物群」という動物群がいる。
カナダのブリティッシュコロンビア州から発見された「バージェス頁岩」から発見された化石群のことである。
（頁岩＝粘土が固まってできた水成岩。板状でやわらかく、薄くてはがれやすい。泥板岩。Oxford Languagesより引用）
この「バージェス動物群」は「カンブリア爆発」よりもやや後のものとされ（5億5000万年前）、古生物学者のチャールズ・ウォルコットが1909年に初めて発見した。
（カンブリア爆発＝古生代カンブリア紀、およそ5億4200万年前から5億3000万年前の間に突如として今日見られる動物の「門（ボディプラン）」が出そろった現象である。 カンブリア大爆発と呼ばれる事もある。Wikipediaより引用）
ウォルコットは自身も古生物学者であるから、彼が収集した生物化石の分類を自分で行ったが、1966年にハリー・ウィッティントンらがこれらの化石群の再調査を行ったところ、節足動物ではあっても既存のどの種にもあてはまらないものが多数あることを発見した。
それらのハリーたちの研究の様子を、同僚であるグールドが著したものが「ワンダフル・ライフ」という本である。
現在では「ハヤカワ文庫MF」から出版されているようだが、もともとは「早川書房」の大判本であった。
グールドは、ハリーらの研究の結果を考察し、「断続平衡進化説」というものを打ち立てたが、現在ではそれは否定されている。
「断続平衡進化説」は「断続平衡説」ともいい、
「生物の種は、急激に変化する期間とほとんど変化しない静止（平衡、停滞）期間を持ち、”徐々に”進化するのでなく、“区切りごとに突発的に”進化していき、小集団が突発して変化することで形態的な大規模な変化が起きるとする進化生物学の理論の一つ」
というものである。（Wikipediaより引用）
・・・と、ここまでが前置きである。
この「バージェス動物群」の中で、一際異彩を放っているのが「ハルキゲニア」である。名前からして「夢に出てきそうな不思議な姿を指したもの」という意味になる。
ハルキゲニアが発見されるときには、必ず丸い物体が見つかったので、当時はそれを「頭部」として復元されることが多かった。それが冒頭の復元図である。
ところが、その後1992年以降になって、ハルキゲニアの化石から反対側の「触手」が発見された。従って、「触手」とされた部位は対なす脚であり、記載当時からの復元像は上下を逆さまにしたものであったことが判明した。そしてその後「前後」も反対であったことが発覚した。
そのため、1992年以降の復元図は冒頭のものを上下・前後逆にしたものになった。
・・が、その後、2015年になって、ケンブリッジ大の研究者が「これまで知られていなかった頭部」を発見。
「電子顕微鏡で化石を精査したところ、（これまで）頭だと思われてきた大きな丸は体の一部ではなくゴミで、その下から小さな口と2つの眼を備えた細い頭部が見つかりました」とのことである。
（engadgetより引用）
この発見により最新の復元図はこのようになった。
あえて冒頭の、最初の復元図をもう一度、比較のために載せてみる。
確かに、針状になっている足（？）が体の上向きに修正されており、「足」ではなくなっている。そして最初は上にあった「触手」が下向きの「対をなす脚」となった（最初の復元図においては対をなしておらず、1本のみである）。また、あたかも「人間の頭部」のように見えた丸い球体は姿を消している。最初の時点で「肛門」だと思われていた部分こそが「口部」（および目、歯）であり、ここから捕食していたように修正されているのだ。
Wikipediaのほうでは、2015年のこの発見はこのように記載されている。
さらに2015年、ケンブリッジ大学のマーティン・スミスらの調査によりハルキゲニアの化石から、従来尾部とされた細長い部位の先端に一対の目と小さな環状の歯が発見された。同時に従来頭部とされてきた球状の物体は、泥に押しつぶされた際に肛門から押し出された内容物であったことが示唆され、従来の復元図は前後逆であったと結論された。
新発見によって復元図が変わることはあるが、当初「ハルキゲニア」と名付けられた「夢に出てきそうな不思議な姿を指したもの」というインパクトは、やはり最初の復元図にこそふさわしい気がする。
最新の復元図がもし当時からわかっていたとしたら「ハルキゲニア」という名称にはならなかったのではないか・・などと考えてしまうのである。
参考資料：Wikipedia「ハルキゲニア」「バージェス動物群」「断続平衡説」「カンブリア爆発」、engadget「ハルキゲニアの「本当の頭」見つかる。 新しい復元動画公開 Hallucigenia」、科学っぽかったりサブカルだったり
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